「昨日はできたのに、今日はまた間違えている」
「指を使えば答えは出せるけれど、時間がかかる」
「プリントを見ただけで嫌そうな顔をする」
小学1年生のくり上がりのある足し算では、このような様子がよく見られます。保護者としては、「何度やっても身につかない」「このまま算数が苦手になってしまうのでは」と心配になるかもしれません。
ですが、くり上がりでつまずく子の多くは、努力不足なのではなく、数の見方や考え方の土台がまだ育ち切っていないだけです。そこを順番に支えていくと、少しずつ安定していきます。
ここでは、元塾講師としてよく見てきた「つまずく子の共通点」と、家庭でできる対策を整理します。
つまずく子の共通パターン3つ
1. 10のまとまりがまだ弱い
くり上がりの足し算では、「まず10をつくる」という感覚が大切です。
たとえば 8+5 なら、「8に2を足して10、残り3で13」と考えられるとスムーズです。
ところが、つまずく子はこの見方がまだ十分ではありません。8に何を足せば10になるかがすぐ出てこないため、毎回1つずつ数えたり、指に頼ったりして時間がかかります。
ここで大切なのは、答えの速さよりも、「10のまとまりが見えているか」を見ることです。
2. やり方だけ覚えて、意味がつかめていない
学校では、くり上がりの足し算を「分ける」「10をつくる」「残りを足す」という流れで学びます。
ただ、子どもの中には、手順だけを表面で覚えてしまう子がいます。
たとえば、「5を2と3に分けるらしい」とは言えても、なぜ分けるのかがわかっていない状態です。そうすると、数字が少し変わっただけで止まってしまいます。8+5はできても、9+6や7+8になると急に不安定になるのは、このパターンに多く見られます。
3. 間違いが続いて、自信をなくしている
くり上がりの足し算は、小学1年生にとって急に難しく感じやすい単元です。それまで何とかできていた子ほど、ここでつまずくと「自分は算数が苦手なんだ」と思いやすくなります。
すると、本当は少し考えればできる問題でも、「わからない」「もう無理」と気持ちが先に出てしまいます。理解の問題に、自信の低下が重なると、さらに苦手意識が強くなってしまいます。
家庭でできる具体的な対策
まずは「10をつくる」感覚を育てる
くり上がりが苦手な子には、いきなりプリントを増やすより、「いくつで10になるか」を自然に言えるようにする方が効果的です。
たとえば、
- 8のお友だちはいくつ?
- あといくつで10になる?
- 6といくつで10?
といったやり取りを、短時間で繰り返してみてください。おはじきやブロックなど、実際に動かせるものを使うと理解しやすくなります。紙の上だけではわかりにくい子ほど、目で見て手で動かす経験が役立ちます。
答えより「どう考えたか」を聞く
間違えたとき、すぐに正解を教えたくなることがあります。ですが、くり上がりでは答えそのものより、途中の考え方の方が大切です。
たとえば 8+5 を間違えたら、
「8にいくつ足したら10になるかな?」
「5はどう分けたらやりやすそうかな?」
というように、考え方に戻してあげるのがおすすめです。自分の言葉で説明できるようになると、やり方が安定しやすくなります。
一度にたくさんやらせない
苦手な単元ほど量を増やしたくなりますが、くり上がりは雑に反復すると逆効果になりやすいです。わからないまま何問も解くと、子どもの中に「算数はしんどい」という印象だけが残ってしまいます。
1日5問程度でも、考え方を確認しながら丁寧にできれば十分です。今日は8+□の形だけ、今日は10をつくる練習だけ、というように絞って取り組む方が、負担が少なく続けやすくなります。
できたことを具体的に伝える
ほめるときは、「すごいね」だけで終わらせず、何がよかったのかを言葉にすると効果的です。
- 10を先につくれたね
- 指だけじゃなくて考えようとしていたね
- さっきより落ち着いてできたね
こうした言葉は、子どもが「自分は何ができたのか」を理解する助けになります。できた部分を具体的に見てもらえると、自信が少しずつ戻ってきます。
まとめ
くり上がりのある足し算でつまずく子には、「10のまとまりが弱い」「やり方の意味がつかめていない」「自信をなくしている」という共通点がよく見られます。
大切なのは、できないことを責めるのではなく、どこで止まっているのかを丁寧に見ることです。くり上がりは、ただ答えを覚える単元ではなく、数を分けたり、10をまとまりとして考えたりする大事な土台づくりの時期でもあります。
家庭では、10のまとまりに慣れること、考え方を言葉にさせること、量を増やしすぎないことを意識してみてください。急がず、一つずつ「わかった」を積み重ねていけば、子どもは少しずつ前に進んでいきます。
