子どもと話す時間は取りたい。でも、「今日どうだった?」と聞いても「ふつう」「忘れた」で終わってしまう。次に何を聞けばよいか、こちらも止まってしまうことがありますよね。
そんなときは、目の前にある好きなものについて「一つ教えて」と頼んでみる方法があります。子どもが作ったもの、好きな絵、遊びのルール。話題を一つにして、親が教わる側に回ってみます。
私が大切にしたいのは、短い時間でも、親も子どもも無理なくやり取りできることです。毎回ためになる話を準備しなくても、「そこが好きなんだね」と一つ知るところから始められたらよいと思っています。
ここでは、小学校低学年くらいの子との会話を想定して、始め方と反応に合わせた声かけをまとめます。以下の会話とイラストは、家庭で試すための例です。
話題は、子どもが今見せたいものを一つ
用意するのは、家にあるもの一つで十分です。
- 描いた絵や、作ったもの
- 好きな本の一ページ
- 最近よく遊ぶおもちゃ
- 子どもが知っている遊びのルール
親が説明しやすいものにそろえなくても大丈夫です。大人には違いが分からないキャラクターや、何度も見ている同じ絵でも、本人には見てほしい部分があるかもしれません。
最初の声かけは「いま見せたいもの、一つある?」くらいにします。選びにくそうなら、目の前にあるものから「この絵と積み木なら、どっちを見せたい?」と二つだけ示してみてください。
「どっちも嫌」と言ったら、ほかの話題でも、今日はやめるでもかまいません。選択肢を出したら必ず選ばせる、という約束にはしないでおきたいですね。
物を持ってきてもらう時間がなければ、今している遊びをそばで見るところからでも始められます。
「一つ教えて」の進め方
1.親が聞きたいことを、一つだけ伝える
例えば、子どもが絵を持ってきたら、
「この中で、一番見てほしいところを教えて」
遊びのルールなら、
「初めてやる人は、最初に何をしたらいい?」
と頼んでみます。
そこで返事が来る前に、「何を描いたの?」「どうして?」「誰と?」と質問を重ねないようにします。一つ聞いたら、いったん子どもの言葉や動きを待ってみてください。
親が本当に知らないことを聞けばよいので、何も分からないふりをする必要もありません。知っている遊びでも、その子が気に入っている場所や、どんな工夫をしたかは、聞いてみないと分からないですよね。
2.言葉で説明できなければ、見せてもらう
「ここ」と指をさすだけなら、
「ここなんだね。どんなふうに使うか、見せてもらえる?」
と、動きでも伝えられる形にします。
積み木なら動かして見せる。絵なら見てほしい場所を指す。本なら好きなページを開く。説明の方法を文章だけに絞る必要はありません。
子どもがやって見せている間は、先に手を出して完成させず、いったん見ます。触って確かめたいときは「私も動かしていい?」と聞いてからにすると、作品や遊びを勝手に変えてしまうことも避けられます。
3.分かったことを、親の言葉で一つ返す
見せてもらったら、まず受け取れたことを返します。
「この長い積み木を、上に渡したんだね」
「赤いところを、一番見てほしかったんだね」
もし違っていたら、子どもに直してもらえば大丈夫です。「そっか、ここじゃなくてこっちだったんだね」と受け取り直せます。
UNICEFも、子どもの話に関心を向け、聞いた内容を言い換えて返すことを、親子のコミュニケーションの方法として紹介しています。UNICEFの解説(英語)
難しい言い方に整えるより、子どもが示したことと、親が返す言葉が合っているかを大事にしたいところです。
4.教えてもらった内容を添えて終える
終わるときは、
「教えてくれてありがとう。橋の下を車が通れるんだね」
のように、知れたことを一つ添えます。
「上手」「すごい」という感想が自然に出るのはよいと思います。ただ、毎回大きくほめようとしなくても、「何を見たか」「何が分かったか」を伝える言い方ができます。
親が少し試せる内容なら、「教えてもらった順番でやってみるね」と、聞いたとおりに一度やってみるのも一案です。途中で分からなくなったら、その箇所だけ聞き直します。
例えば、積み木の橋を見せてもらうなら
会話を長く続けようとせず、一つの作品の一部分に絞った例です。
親「この橋で、見てほしいところを一つ教えて」
子「ここ。車が通れる」
親「下を通れるんだね。どこから入るの?」
子「こっちから」
親「こっちなんだ。私も一回通していい?」
子「いいよ」
親「通れた。車の道を作ったんだね。見せてくれてありがとう」

このあと、橋の名前や長さ、積み木の数まで続けて質問しなくてもかまいません。「車を通せるように作った」ということが一つ分かれば、ここで終えられます。
本人が「こっちも見て」と話し始めたら、親に時間がある範囲で続きを聞きます。親が用意した質問を全部使う必要はありません。
返事が出ないときは、聞き方を一段小さくする
反応だけで「話すのが苦手」「興味がない」と決めず、その場で変えられることを一つ試してみます。
| 子どもの反応 | 試せる声かけや対応 |
|---|---|
| 何を選ぶか決まらない | 「この絵とこの本なら、どっちにする?」と目の前の二つにする |
| 「分からない」と言う | 「説明しなくても、好きなところを指してくれたらいいよ」と伝える |
| 指をさすだけ | 「ここを見てほしかったんだね」と、示した場所を一緒に見る |
| 「見て」と言って自分で続ける | 質問を増やさず、まず動きを見る |
| 親の理解に「違う!」と言う | 「そうだったんだ。もう一度見せて」と受け取り直す |
| 「今は嫌」と言う | 「分かった。今日はやめておこう」と切り上げる |
話し出すまでを秒数で測ったり、返事がないたびに別の質問へ切り替えたりしなくても大丈夫です。少し待っても乗ってこなければ、今日はそういうタイミングではなかったとして終えられます。
自分の作品を見せるのはよくても、親に触られるのは嫌なこともあります。「説明してくれたから触ってよい」とはせず、見せてもらう範囲も本人に確かめたいですね。
親が気になったことを、全部その場で直さなくてもいい
話を聞くと、言い間違いや、直したくなるところが見つかることもあります。
遊びのルールや作品の設定なら、まず「この遊びではそういうルールなんだね」と確認できます。親が知っている遊び方と違っていても、本人が作ったルールかもしれません。
一方で、本に書かれている事実と違う話なら、「私は少し違うと思っていたから、あとで本のこのページを一緒に見ようか」と、確かめる場面にできます。分からないことは、親も「そこは私も分からない」と言ってかまいません。
危険な使い方をしていたり、誰かが嫌がる遊びになっていたりするときは、その場で止めます。話を聞くことと、何でもそのまま認めることは分けて考えます。
親の時間が短い日は、終わりを先に伝える
帰宅後など、話を聞きたい気持ちはあっても、時間や余力が少ない日もありますよね。
そんなときは「今は一つ見せてもらえるよ」と、最初から範囲を伝えておく方法があります。「今日は三分くらいなら聞ける」でもよいですが、その時間は家庭の都合に合わせた目安です。決まった分数を守ることが目的ではありません。
続きが出てきたときは、「もっと見せたかったんだね。今日はここまでにしよう」と受け止めてから終えます。後で聞ける時間が確実にあるなら伝えられますが、難しい日は、続きの約束までしなくても大丈夫です。
途中で用事に戻る必要が出たら、「まだ聞いているよ」と言いながら別のことを続けるより、「いま一度手を離すね」と伝えて区切ります。聞けなかった日は、次に余裕のあるときに、また目の前のものを一つ見せてもらう。それくらいから始めてもよいと思います。
まずは「何を教えてもらえたか」を一つ
終わった後に振り返るなら、「何分話せたか」「説明が上手だったか」に点をつける必要はありません。
「橋の下を車が通るように作っていた」
「この本では、虫の足のところが好きだった」
そんなふうに、親が知れたことを一つ覚えておくだけでも、次に声をかける材料になります。記録を残したい場合も、一言程度で十分です。子どもに振り返りの報告まで求めなくてかまいません。
子どもと何を話そうか迷ったら、まずは「一つ見せて」「一つ教えて」。用意した質問から少し離れて、子どもが見せてくれたものを一緒に眺める時間を作ってみてください。
家庭学習の場面で言葉が出ず、手が止まっているときの関わり方は、「わからない」と言えないときの見方でも整理しています。

